ユーザーストーリーと氷山
前回に続き、今回はアジャイルひよこでユーザーストーリーのお話しをした時の第2点、ユーザーストーリーと氷山についてです。
ユーザーストーリーの書き方が上達してくると、制服を着せただけではない、しっかりした内容でまとめられるようになってくるのですが、それでもまだ挑戦は続きます。特によく耳にする悩みは…
サイズが大き過ぎる!
そう、丁度良いサイズのユーザーストーリーを書くのはとっても大変なんです。
アジャイルをしばらくやっているチームやプロダクトオーナーでさえも、きちっとした内容でかつジャストサイズのユーザーストーリーを次から次へと作成するのは容易ではありません。
「え〜じゃあどうすれば良いの?」
と途方にくれそうなあなたへ…
大丈夫です。
ユーザーストーリーは最初から最適のサイズにしなくても良いのです。
まずはしっかりと内容のある、ユーザーの視点から記述されたユーザーストーリを書くことに集中することが第一で、サイズは気にしなくても良いのです。
「でもサイズってとても重要なはずなのに、何故サイズを気にしなくても良いの?」
その理由は、ユーザーストーリーは氷山だからです。
つまり、ユーザーストーリーにはもともと次のような、氷山のような特徴があるのです。
- 最初にハッキリみえるのは水面上の一角だけ
- 見えない部分の方が大きい
- 調査していくにしたがって、段々と水面下の部分が見えてくる
ですから、開発初期、あるいはプロジェクト初期の頃には大きなサイズのユーザーストーリーしか書けないのが当たり前なのです。
とは言え、それだけでは腑に落ちないことでしょう。だって典型的な1〜4週間以内のスプリントで完成できないとマズイはず。氷山のように大きいままでは、実装に時間がかかり過ぎますよね。
「だから氷山ではなく、かき氷用の氷くらいの大きさじゃないと…。最終的には要するにかき氷を作りたいんであって、それは氷山から直接作れないでしょ?」
その通りです。
ですからユーザーストーリーは「最初から最適のサイズにしなくても良い」のですが、その後グルーミング (Grooming)というプロセスを続けることによって、サイズ調整をしていく必要があるのです。
このグルーミングが、氷山サイズのユーザーストーリーをかき氷に丁度良いサイズになるまでどんどん分解していく過程である、というわけです。
大事なのは、ユーザーストーリーを最初からジャストサイズで書くことではなく、大きくて曖昧なユーザーストーリに対してグルーミングを絶えず行い、ジャストサイズへと分解することです。
つまりグルーミングこそが、しっかりした内容でジャストサイズのユーザーストーリーを生むための必要・不可欠な作業なのです。
グルーミングには色々な大切な作業が関わってきます。
- ユーザーとの確認・検証・交渉
- ステークホールダーとの確認・検証・交渉
- 内容の分析・調査(ビジネス視点、技術面、市場動向)…などなど
内容を検討した結果、分解ではなく書き直しをすることも多々ありますし、価値や優先順位の見直しをすることもあります。
ユーザーストーリーは、一度書いておしまいじゃない
ということを肝に銘じておきましょう。
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蛇足ですが、氷山の比喩は、ユーザーストーリーに限って当てはまるものではありません。
何か新しいことを始める段階では、大抵氷山サイズのことしか分かっていないのが普通です。それを次第に細かく検討したり調査したりを繰り返しながら、ある程度分解してから実際に着手する、というのは私たちが色んな場面で行う手段です。
勿論ウオーターフォール形式開発においても然りです。
但しアジャイルと違うのは、「いつどんな風に氷山を分解するか」でしょう。
ウオーターフォールでは氷山をまず片っ端から調査し、それから全てを一度にかき氷用のサイズに分解することから始める、と考えることができます。全て分解し終わったら、今度は片っ端からかき氷を作り始め、それが全部終わったら最後にまとめてお客様に食べてもらう、という過程です。
それと対照してアジャイル形式では同じ氷山を、まずかき氷に最適なところから優先的に分解し始め、丁度良いサイズに分解できたらかき氷を作ってしまおう、そしてお客様に即食べてもらって感想を聞こう、という流れなのです。
お客様がかき氷を一気に食べ過ぎてお腹を壊さないようにするためにも、アジャイル形式で開発できるようにしていきましょう。😅